関 智生展「Real」

関 智生展「Real」

 この度マサヨシ・スズキ・ギャラリーでは関 智生(せき ともお)展を開催いたします。
 関 智生は1965年奈良県に生まれ、1989年名古屋芸術大学 美術学部 研究生を修了し、東京中心に個展をコンスタントに開催しましたが、 新たな展開を求め1998年愛知県より2年間の助成を受け渡英しました。2000年ノッティンガム・トレント大学Fine Artにて修士を取得後、 2003年セントラル・セント・マーティンス・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインにてAssociated Studentを修了しました。

 今回当ギャラリーにて展示する作品は、作家がこの10年テーマとしている「絵画はどのような構造で成り立つのか?」により制作された抽象的な「Many Edges」シリーズと、 具象的な風景画[Real]シリーズです。主にイギリスで制作された「Many Edges」は、規則的に配列された孔を画面に穿ち、その裏面よりゴムベラでスキージーを施す作品です。 作者によって施された絵具の痕跡は、裏面より孔を通り、画面の表面に涙の跡のようなかたちとなりあらわれます。

   一方、日本に帰国後制作された赤い風景画「Real/Red」は岩絵具を用い、その荒い粒子より即物的で「触覚的な筆跡」が意図されています。5年に及ぶイギリス留学を終え帰国した際、 作者を驚かせたのは日本の繁茂する山の緑であり、ヨーロッパにはない縄文的な生命力でした。強烈な「緑」を強調するため、補色である「赤」を用いはじめたのでした。

   今回は「Many Edges」シリーズをギャラリー地下スペースに、[Real]シリーズをギャラリー地上スペースに展示いたします。この10年の仕事を一堂にご覧いただくことで、 作家がテーマとする「絵画の支持体の構造」と「触覚的な筆跡」の関係性を、より深く理解していただけるかと思います。
 また2010年5月にソニー・デジタル エンタテインメント・サービスから出版されたアートブック「赤い森の少女と少年の赤い森」の原画(ドローイング)もあわせて展示いたします。

敬具

2010年 6月吉日 鈴木正義